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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.87


2021年12月号


発行責任 NPO法人かわさき技術士センター

「北条五代に学ぶ事業継承」
  技術士(金属部門、総合技術監理)   萩野 太郎

  多くの事業者にとって、現在の事業をどのように、いつ、誰に継承するかは高い関心を持たれてい ることと思われます。
  今から 500 年前戦国時代は 400 年に及ぶ中世が終り徳川時代の近世・近代への幕開けに繋がる大き な変化の時代でもありました。
  その時代背景で関 8 州の領国支配をした「北条五代、奇跡の 100 年民と歩んだ戦国の夢」(発行ワ ニブックス、令和 3 年 3 月発行、 著者 松沢成文(元神奈川県知事、現参議院議員) は「万民愛隣の理 想の国をめざした北条氏は、実に稀有にして魅力的な戦国大名であった」と記されています。 「関東の 戦国覇者、北条氏。初代宋瑞の登場から五代氏直の秀吉との東西決戦まで、民生で独自の手腕を見せ、 一族が結束して支配を広げた屈指の戦国大名の実像」とあり、 内乱や下剋上も起こさず統一的な検地や税制の整備と一族の役割分担による先進的な管理体制の充実などが見られ、 同時期他の大名家とは 異なった体制の充実が 100 年に渡る領国支配を可能にしたと思われます。 但し、上杉謙信や武田信玄 の来襲を退けた成功体験が対秀吉への対応で大失敗したと考えられます。
  あらゆる仕組みや方法が大きく変化する現在、北条家の優れた点への学びと時代の変化に対応でき なったことを「他山の石」にしたいものです。

「ユニバーサルデザインの考え方とは」
  技術士(機械部門、総合技術監理)   嶋村 良太

  東京オリンピック・パラリンピックは紆余曲折を経たものの無事開催され、アスリートの活躍と共に、 特にパラリンピックにおいてはバリアフリー・ユニバーサルデザインもますます注目されました。
  我が国の公共空間におけるバリアフリー・ユニバーサルデザインは、1990 年代後半の「ハートビル法」と 「交通バリアフリー法」の制定を契機として促進され、 各事業者の積極的対応とその後の法令・ ガイドライン等の高度化で、 現在では世界トップグループの一角を占めるところまで来ています。
  ここでバリアフリーとは、製品や社会システムの利用に困難を伴う障害者や高齢者などの人々に着目し、 その障壁(バリア)となる事象を取り除く対策を取ることです。一方ユニバーサルデザインとは、 対象を障害者や高齢者などだけに限定せず、どのような人でも使いやすいように製品や社会システムを設計することです。 しかし冒頭に記した「パラリンピックでユニバーサルデザインが注目され る」という現象からも分かるように、 「ユニバーサルデザイン=障害者・高齢者のために特に配慮した 設計」という認識をしている人も、まだまだ多いのではないでしょうか。 例えば、身近な移動手段で ある、現在運行されている路線バスの多くは出入口に段差のないノンステップバスですが、 初めて登 場した 1990 年代半ば頃は、それ以前に存在した車いす乗降用のリフトやスロープを取付けた少数の「バリアフリーなバス」の流れから、 多くの関係者が「ノンステップバスもそれらと同様の、障害者 対応の特殊用途のバス」と認識していました。 ところが実際にノンステップバスの運行が始まってみ ると、障害者や高齢者だけでなく全ての乗客にとって乗降がしやすく、 結果として運行の遅れが少な くて済むなど大きなメリットがあることがわかってきたのです。 その後官民をあげてノンステップバ スの改良と導入が促進され、今では誰もが日々当たり前に利用する、 本当の意味でのユニバーサルデ ザインとして定着しています。
  「障害者・高齢者のために特に配慮した設計」を行うことは、決して悪いことではありません。 しかしノンステップバスの例のように、そこだけに留まらず広く一般の人にも対象を広げて考え、 「真の ユニバーサルデザイン」としていくことで、社会全体としてより大きな便益を実現できます。 これは 関連する産業から見れば、より大きなビジネスチャンスにもなり得るということです。 今後社会や生活の各分野での、ユニバーサルデザインの一層の進展を期待するものです。

「中小企業における DX への取り組み」
  技術士(電気電子部門)   豊田 順一

  2018 年に経産省から発表された DX 推進ガイドラインによると、DX を下記の通り定義づけています。
  「データとデジタル技術を活用して(IT 化)、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、 ビジネスモデルを変革するとともに、業務自体や、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優 位性、 つまり『他の会社よりも儲かる仕組み』を確立することである。」
  また、同年に経産省から発表された DX レポートでは、日本企業がデジタル化に取り組まないと他の国との競争上の優位性を失い、 年間12兆円経済的損失を被るとの予想が記載されており、国の危機感 を強く表明しています。 「IT 化は戦術であり DX は戦略である」と言われ、IT 化を如何に取り入れていくかが DX の重要なポイントとなります。 DX の導入には、①アナログ処理をデジタル処理に移行、 ②ノウハウとデジタルデータの蓄積、③宝の山であるデジタルデータから得られたノウハウを業務やビジ ネスモデルに組み込む手順が必須です。 中小企業が DX 化を進めるために、企業の経営戦略 ・ビジョ ンを下記手順で策定します。

1)何のため IT 化するのかという「目的」を明確にし、企業戦略・戦術を決定します。
①人手不足に対応する: ◯少人数でも業務が行える体制や少子高齢化に対応できる体制の実現。
②働き方改革を進める: ○従業員のライフスタイルに柔軟に適応 ○クラウド型のコミュニケーションツールと 業務改善グループウェア(Chatwork、Cybozu 等)を導入した細やかな業務管理。
③業務を効率化する(コスト削減、労働環境改善等): ○RPA 導入による事務作業の自動化推進。 ○顧客情報や購入履歴データベースを基に訪問優先度の高い顧客を抽出し訪問先リストを適宜作成。
④ビジネスチャンスを拡大する: ○ホームページを開設してインターネットの徹底的な活用。 ○SNS を販売促進に上手に活用。 ○近隣の地域事業者と連携したコラボ事業を積極的に展開。

2)DX 推進を成功するためのポイントとして、
①自社の強みやこだわりを意識しつつ経営者がビジョンと強い決意を示す。
②プロジェクトチームで全員が参画する。
③外部専門家・支援機関を徹底的に 活用する。無料アプリや格安アプリを徹底的に活用する。
など効果的な戦術を遂行します。

3)経営資源が限られる場合は「IT 導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」申請にも挑戦します。


お役立ち最新情報

[技術士によるセミナー] (現場経験に基づくホットな内容)

本年度も「KIIP 公益法人川崎市産業振興財団」との共催(技術)セミナーを、9/25、10/20、11/17 の 3 回にわたり、「納入先等から環境関連データの提出要請を受けたときの上手な対応方法」、 「職場に 戻りすぐ使える現場改善手法」、「脱炭素社会、気候変動対応時代の中小企業の ESG・SDGs への展開」 のテーマで、会場ライブと Zoom オンライン(水曜日 15:00~17:00)同時配信で実施致しました。 環境関連データの作成対応、QC ストーリーの現場実践、カーボンニュートラル対応といった、 社会的・ 現場ニーズに即した内容を題材にしています。皆様には、今後とも引き続きご活用頂ければ幸いです。 公益財団法人川崎市産業振興財団 (kawasaki-net.ne.jp)

[支援事業] (申込先:川崎市中小企業サポートセンター)

ワンデイ・コンサルティング(無料) 原則随時です 企業に出向き緊急の課題を支援します。最大3回可能です。
専門家派遣(有料) 募集があります 費用は半額企業負担です。課題に対し最大12回の継続支援。
川崎市中小企業サポートセンターとは
中小企業を応援する総合的な支援機関で、主な支援事業は次のとおりです。
★総合相談窓口 ★専門家相談窓口 ★人材育成セミナー ★専門家派遣事業
★かわさき企業家オーディション ビジネス・アイディアシーズ市場」
TEL:044-548-4141 FAX: 044-548-4146 URL: http://www.kawasaki-net.ne.jp/
2021年12月 1日発行  発行責任者:NPO法人 かわさき技術士センター 会長 磯村 正義
NPO法人 かわさき技術士センター URL:http://www.n-kgc.or.jp/ E-mail: info@n-kgc.or.jp

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