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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.11


2008年 5月号


発行責任 かわさき技術士クラブ

コラム 「システム工学的な発想を!」 技術士(化学・総合技術監理部門) 小野 健雄

 現在の私達は、システムという言葉を良く眼・耳にしますが、知らない間にその恩恵や影響を受けています。 例えば、車の進行と共に信号が青になる「交通システム」、スイッチや栓を捻ると供給される電気・ガス・水道などの 「ユーティリティ供給システム」、最近、話題になっている、消えた年金を特定するための「名寄せシステム」、 これからの環境問題を検討するための「地球環境システム」等々です。 しかし、これらシステムの中身については非常に難しいものとして、身近に利用可能なものとは理解しておりません。 システムに関する学問を「システム工学」と言い、従来の縦割り的な機械、電気、化学・・・等の学問を横断的に取り扱い、 工学、社会、地球的な種々な問題を解決し課題を達成するための学問です。 具体的な中身には、問題解決のための発想法、意志の決定法、システムの最適化や信頼性、プロジェクトのスケジューリング、 組織、管理など、身近で実業に役立つ基礎的な内容がいろいろと含まれています。 最適化の身近な例として、原料や人員に使用制限があり、複数の製品を製造する場合、 利益を最大にするためには生産計画をどうすべきか等の線形計画法の問題は、中学校レベルの算数の知識があれば、 パソコンのエクセル表計算ソフトを使って、簡単に答えを出すことが可能です。 日常の会社経営の中でも、種々な業務をシステムとして横断的に捉え、新技術の開発、人員の最適配分、品質・工程管理等々を俯瞰し、 体質改善に繋げてみては如何でしょうか。

気になる用語 「産学連携」   技術士(生物工学部門) 久保 康弘

 一般的には、大学や公的研究機関等と産業界の間で、お互いの強みを活かしつつ、相互協力関係を結び、 人材面や研究活動面などを中心とした交流・事業活動を行うことを意味します。具体的な活動の中身としては、 (1)委託・受託、共同研究、 (2)人材育成・交流(インターンシップ、フェローシップ制度等)、 (3)技術移転(TLO、リサーチ・オン・キャンパス等)があります。最近はこれらに加えて、 (4)ベンチャー企業の設立・運営が加わり、 実利や社会貢献の部分がクローズアップされる傾向にあります。
 産学連携は、何も今に始まったことではありません。過去の著名な成果を身近な事例でみると「味の素」や「オロナイン軟膏」 等も産学連携の成果物としてあげられます。しかし、高度成長が終盤の 1960年代後半に吹き荒れた大学紛争等で、 産学連携を「癒着」と捉える風潮が見られるようになり、日本では産学連携は消極的になり、長く「冬の時代」が続いてしまいました。 米国は逆に、日本の高度成長や中小企業の成功事例を研究し、政府が資金援助を行った発明に対し、 研究を実施した大学や公的研究機関が成果を元にした知的財産権を獲得できるように計らい、 1980 年のバイ・ドール法の制定以後は、「学」から「産」へのライセンシングが活発になり、米国産業界の競争力復活に繋がりました。 日本も米国の動きにならい、遅ればせながらではありますが、産学連携活動を通じた経済活性化・産業界の競争力強化を進めるようになり、 大学等技術移転促進法(TLO 法)の制定(1998 年) 、や、国の競争的資金による委託研究から生まれた知的財産権について、 受託企業に 100%帰属させる規定(日本版バイ・ドール規定)の制定(1999 年)、 産業技術力強化法による国公立大学教官の兼業規制の緩和(2000 年)等が行われました。 昔の日本であれば、欧米での成功物をアレンジして上市すれば事は足りてました。 しかし、先進国となった今は、「知」を産業へ転換することが必須なのです。大学は「知」の創出の場ではありますが、 「知」の社会還元の場が少なく、その役割を企業に求めざるをえないため、産学連携が重要なのです。

連載解説 「リスクアセスメント」(第1回)  技術士(電気電子・総合技術監理部門) 鈴木 安男

  「フォークリフトが荷の直前で一旦停止していませんよ」、 「木パレットにささくれがあり,指に刺さりますよ」、 「通路に仮置きの荷が置いてあるので,人にぶつかりますよ」・・・等々,職場にはいろん な危険,有害要因が無数にあります。また,よく安全担当者の方が言われることですが「うちの職場に はこんなにも危険な箇所があるのですか」と。そうなんです,残念ながら今まで余りこのような危険や 有害な状況に 「気づいていない」のです。ここが問題なのです。ここにメスをいれ危険や有害な状況 (潜 在的な危険源)を事前に把握し,その危険や有害な程度を(発生したときの被害のひどさと発生確率) 考慮して,個々の危険や有害な事象に対して,具体的な対策(できることを)を講じていくことが労働 安全衛生のリスクアセスメントの考え方です。 そもそもリスクアセスメントは, リスク(危険性,有害性), アセスメント(事前評価)のことで,危険性や有害性を事前に評価することなのです。従来は, 「事後 評価」のやり方なので,もぐらたたき同様,災害が発生したら手を打つというように後手後手の対策に なり,根本的な労働災害減少に寄与しませんでした。つまり,以前の TV の CM にもあった,「元から (潜在的危険源) たたなきゃだめ」というように発想を変えないと職場の危険や有害性は減少しません。 究極のリスクアセスメントの目的は, 「ゼロ災」で快適な職場にする手法のことで,全員参加で活動 を推進します。つまり,リスクアセスメントを実施することが目的ではありません。
 労働災害は危険源(危険性又は有害性)と人の接触から発生します。人が危険性又は有害性(危険源) と離れていたり,隔離されているときは,リスクは発生しませんが,接触することで,リスクが発生し ます。従って,労働災害を発生させないためには,1危険性又は有害性(危険源)をなくす 2人と危 険源との接触を絶つ 3十分な安全衛生対策をすることが重要です。 (続く)

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2008年 5月 1日 発行 発行責任者:かわさき技術士クラブ 代表幹事 武藤文男
E-mail: f-mutoh@df6.so-net.ne.jp

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