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「技術士の社会的認知度」
川崎市産業振興財団 専務理事 船橋 兵悟
本年、4月1日に産業振興財団専務理事・事務局長に就任しました。船橋でございます。
かわさき技術士センターがNPO法人として、市内中小企業の技術支援はじめ
当財団の事業運営にご協力いただいておりますことを、心より感謝申し上げます。
私はこの3月末まで、川崎市役所に在職しておりましたが、後半の5年くらい顕著になって来たのが、
技術職のスキル不足です。
新聞紙上でもご存じの方もおられるとは思いますが、道路公園センタを始め各局で起きている、
積算ミス、予定価格の消し忘れ、等これら初歩的なミスにより入札が中止になったり、
しまいには、職員が神奈川県警に逮捕される状況まで起きています。
要因は様々言われておりますが、基本的事項を叩き込まれる前に、
仕様書や設計書を発注する仕事をすることになり、仕事のノウハウ、品質の判断ができないにも係らず、
工事の完成検査までするという現状を役所内部でどれくらい危機感が共有されているかは、甚だ疑問です。
私も総務局長時代、関係業界から「船橋さんどうにかならんのか」とお叱りをいただいたこともありましたが、
「どうにもならん」と言うしかありません。私が思うに、これは、戦後日本の物づくりを支えた、
技術屋集団をはじめ団塊の世代がいかに偉大であったかだと思っています。彼らは仕事を知っていたしそれなりの苦労をし、
業者のつきあい方まで熟知していました。
このような状況は、川崎市役所だけでなく、日本全体で起きており、こうなることは予測はできていたものの、
現実に直面してみると、前述のとおりの情けなさです。
さて、何故技術士センターの会報に川崎市内部の泣き言を長々と書いているかですが、
技術士センターの皆さんに川崎市の技術屋さんを支援してもらいたいと思うからです。
NPO法人だからこそできることがあるような気がするのです。
私は、事務職ですが技術職はもっと社会的に評価されて良いのではと思っています。
技術士センターの皆さんの長年蓄積されたノウハウがもっと社会の中で光り輝く可能性があるのでは、
という思いを述べさせていただきました。
「NPO法人かわさき技術士センターの紹介」
当NPOは、川崎市産業振興財団の中小企業サポートセンターに専門家登録している技術士が集まり、
2012年5月に設立された法人です。会員は企業OBなどの経験豊富な技術者集団であり、
当NPO活動の方針は、① 技術を社会のために活用、② 企業経営を支援、③ 起業と企業の第二創業の支援、
即戦力と共に地道な活動とを掲げて、技術を含む企業経営の課題解決などをお手伝いします。
現在の企業環境は、上記の船橋専務理事の内容にありますように、
技術や経営などあらゆる面で過度に専門化が進展し個人の対応に限界があると考えられています。
私たちは、技術分野で専門があるのですが、チームとして緊密なネットワークを組んで様々な問題や課題に真摯に取り組んで、
顧客の要求にお応えすることができます。
専門分野は、情報、機械、電気電子、化学、金属、経営工学、建設、環境、応用理学と他部門をカバーしていることや、
当NPO活動の方針は、① 技術を社会のために活用、② 企業経営を支援、③ 起業と企業の第二創業の支援、
企業経験で培った経営面での支援も得意です。
当NPO活動の方針は、① 技術を社会のために活用、② 企業経営を支援、③ 起業と企業の第二創業の支援、
④ 技術の発展、継承、保存、普及に尽力します。
当NPOは、中小企業の皆さまの発展成長や地域経済活性化に貢献することを活動の目的としており、
技術士の専門性を活かした誠実できめ細かい支援を行います。顧客に満足していただくことをなによりも大切と考えておりますので、
どんなに小さなことでもご相談いただければ鋭意対応致します。
「産業界で利用されている真空技術」
技術士(応用理学) 坪井 秀夫
真空技術が産業界で広く使われています。インスタント食品、医薬品といった日用品の製造から、
半導体のような微細加工を必要とするナノテクノロジーの分野まで、真空技術が利用されています。
真空とは、JISでは「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態」と定義されています。
従って、空っぽという訳ではなく、真空中には原子や分子が存在しています。真空の度合いは圧力で表現され、
真空の圧力を表す単位としては、SI単位であるPa(パスカル)が使用されています。
真空という空間を作り出すのは真空装置です。真空装置におけるチャンバ(真空容器)の中の空気を真空ポンプで排気し、
チャンバ内を真空状態にすると、チャンバの外側と内側で圧力差が生じます。この圧力差ですが、実はものすごい力です。
外圧である大気圧は1.013 x 105 Paですから、1 m2当たりに約10000 kgf(キログラム重)という約10トン重相当の力が掛かります。
筆者は、過去に誘導結合プラズマ装置に用いる石英のチャンバを設計・開発したことがあります。
真空に排気したときに割れないように安全率を十分考慮して設計しましたが、石英チャンバを最初に排気実験した際には、
大いに緊張した記憶があります。
真空の領域を圧力で表しますと、低真空が100 Pa以上、中真空は100~0.1 Pa、高真空は0.1~10-5 Pa、超高真空は10-5 Pa以下となります。
低圧力になるに従い、粒子(原子や分子)同士の衝突が少なくなります。
高真空の領域(地上約90 km~約250 kmの距離相当の圧力)になりますと、装置の大きさにもよりますが、粒子は主に壁と衝突するようになります。
半導体製造装置の一つにイオン注入装置があります。
これは高速のイオンビームを基板に照射する装置ですが、装置内のイオンビームが走る領域は、高真空から超高真空に保たれています。
また中真空領域においてプラズマを生成するドライエッチング装置を用いれば微細加工が可能になりますが、
この技術は半導体製造プロセスでは必要不可欠なものです。
ドライエッチング装置においては、高エネルギーイオンが基板に対してほぼ垂直に入射するので、微細加工が実現できます。
以上のように、今日では、真空技術は産業を縁の下で支える必須の技術となっています。
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