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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.74


2018年12月号


発行責任 NPO法人かわさき技術士センター

「十年一日」
  技術士(化学部門・総合技術管理) 北本 達治

 私の70年前1948年の川崎市内への引っ越し先に、戦後にできた市場がありました。
 当時は他に店も少なくこのアーケード市場の中に20軒前後並んだ店は繁盛していました。 それが、コンビニ、スーパー、ショッピングセンターが方々にできる中で、 実に60年以上殆どそのままの姿で残っていました。 最近になって取り壊されてしまったようなので、詳しいいきさつは定かではないのですが、 「茹で蛙」の話を思いだしていたものです。 蛙を入れた水をゆっくりと温めていくと蛙はだんだんとその温度に慣れてしまい、 気が付いた時には飛び出す体力がなくなっているという話です。
 中小企業でも社長以下よく頑張っているのだが10年たっても、 20年たっても余り代わり映えしないままという企業をよく見かけます。 世の中はどんどん変わっています。変わらないのは止まっているのではなくどんどん遅れていくことです。 変わるには勇気がいりますが、変わっていかないと十年一日、 気がついた時には世の中が全く変わってしまっていることになりかねません。 日々革新の勇気が必要な所以です。
 来年は猪年、時には猪を見習って突進してみる勇気も必要でないでしょうか。

「『リスクアセスメント』の実効を上げよう」
  技術士(経営工学・総合技術監理部門) 服部 昌幸

 以前の労働災害防止は、「同じ災害は二度と繰り返すな」の精神が基本にありました。 しかし、過去に経験したことがない思わぬ災害が多発する現実のもと、 発生したことのない潜在的な危険を見つけ予め対策を講じる必要が高くなり、 リスクアセスメントは、労働安全衛生法で平成18年に実施が努力義務とされました。 その後12年を経過し、この間「リスクアセスメントはもう一通り実施したから義務を果たした」 とする企業がいる一方、これを繰り返し実施して効果を上げている企業が多く見られます。
 リスクアセスメントは、その手順のなかで「危険性又は有害性の特定」すなわち怪我をする可能性を見つけて、 目の前の作業が「~なので、~して、~になって(怪我)をする」というように災害発生の過程を文書化して 怪我の度合いまでをしっかりと想定することが特に重要です。 怪我の度合いは発生した時の最悪の状況を想定して見積ります。 そのため見慣れた作業の中から思わぬ重篤な災害が発見されることが多いという効果があります。
 今年の「全国産業安全衛生大会」は10月に横浜で開催されました。 その発表の中で職場巡回の要領でリスクアセスメント繰り返すことにより効果を上げている企業がありました。 往々に繰り返しできた結果「リスクは出尽くした」とギブアップするメンバーが出てきたりします。 以前に特定したのと同じリスクが発見された場合は、前の対策が有効でなかったわけですから、 再度リスクとして特定して、新たな素直な気持ちで目の前の作業を直視することが肝要との姿勢をとっています。 また同僚の作業の中からリスクを見つけることに遠慮する意識が出たりもしますが、 日頃の遠慮のない職場環境づくりがこれを払拭するとのことです。 管理者が行動面のリスクを積極的に抽出するために安全パトロールの中で作業者との対話を積極的に行っている企業もありました。 他に特定のテーマを深く掘り下げて、リスクアセスメントを実施した実例など多くの発表がありましたが、 上記のように日常の作業場でのリスクアセスメントを皆で粘り強く繰り返すのが最も実効が上がるように感じました。
 安全はいかに職場のメンバーが常に意識を持ち続けるかにかかっています。 繰り返しリスクアセスメントを実施して過去に発生したことがない災害をも含めて、 その撲滅を目標に活動することを期待します。

「大規模施設園芸における工業的管理の必要性」
   技術士(機械部門) 白石 秀樹

 大規模な施設園芸では、作物の生産管理の手法が収量、ひいては収益に影響をおよぼします。 そこで、生産管理に着目し、従来から工業分野で製造・品質管理に採用されている作業管理のフローと、 作業管理の PDCA サイクルをまわすことの重要性を全国の大規模施設園芸で指導してきました。
 その中の一つとして、3年間にわたって法人化から継続的に指導してきた宮城県のいちご農家は 3名の社員と数名のパート社員を雇用し、日常業務をこなしてきた例を紹介します。 当初、社員は社長が指示した業務を各自が出来る範囲で行っており、 品質管理の問題と出荷作業でのトラブルが多発していました。 組織を適正に再構築することで、日常業務を生産販売スケジュールに沿って計画的に 実施ができるようになり、安定的な収穫、品質の向上、出荷作業の効率向上が達成でき、 最終的にJGAP(Japan Good Agricultural Practice)認証を取得できました。
 農業法人での組織で重要ポイントは次のようになります。

  • 1.全社の経営方針と目的を各部門が共有していること
  • 2.各部門の仕事の分担が明確化されていること
  • 3.PDCAを回し部門内で責任が自己完結していること

 組織・人員の役割が明確化されPDCAがうまく回るようになると組織が活性化し、 品質向上や業務効率向上に対する課題がより明確になります。
 東京五輪にむけて農水省は国内農家にJGAP, G-GAP(Global-Good Agricultural Practice) などの認証取得を強く勧めています。工業系企業の製造技術者でもJGAP指導員の資格を取得すれば
 農家への認証取得の支援が可能なので、この機会にチャレンジされてはいかがでしょうか。 農業工程の改善は工業分野の工程改善と考え方は基本的に同様であり、 TQM、QCをはじめとした生産管理手法がそのまま応用展開できます。 次世代施設園芸のような大規模施設における生産性向上のために 生産管理手法の確立は一層重要度を増していくと予想されます。 その際、組織体制の整備、作業計画と管理、従業員の管理といった内容が基礎になります。
 工業分野の工場での事例など他産業での実例を取り込むことで日本の農業が発展により、 世界の農業市場の中での競争力も高めることになります。

お役立ち最新情報

[技術士によるセミナー] (現場経験に基づくホットな内容)


平成30年度川崎市産業振興財団との共催のセミナー(かわさき新産業創造センターで開催)は終了しました。 (参照:http://n-kgc.or.jp/information/

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2018年12月 1日発行  発行責任者:NPO法人 かわさき技術士センター 会長 磯村 正義
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