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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.22


2010年 4月号


発行責任 かわさき技術士クラブ

コラム 「MOT とその技術」   技術士(電気電子部門) 平田 滋昭

 “技術経営(MOT)とは、持続的発展のために、技術が持つ可能性を見極めて事業に結びつけ、経済的 価値を創造していくマネジメント”と定義されています(「中小企業技術支援ニュース 2009 年 06 号」 参照)。また「革新なくして成長なし」といわれています。中小企業にとっても、どの分野の技術に革 新を求めていくかは企業の将来の成長性を決める重要な企業戦略となります。企業の成長に役立つ技術 は 3 つに大別できると思います。(1)革新的な次世代技術(ライフサイエンス、ナノテク・材料、情報通 信、環境など):川崎市には産学連携推進事業が、また国には「SBIR(中小企業技術革新制度)」があり、 大学や大企業との連携や技術の共有化が図られています。(2)ものづくり基盤技術(組込みソフト、電子 部品・デバイスの実装、鋳造、鍛造、切削、めっき など):国は中小企業のものづくり基盤技術の高度 化を支援します。(3)汎用技術(General Purpose Technology): 製品開発、マーケティング、CRM、分析、 生産性向上、環境負荷低減などに活用されます。換言すれば IT。中小の IT ベンチャーの活躍に期待し ます。

MOT 第6回 「リスクマネジメント」  技術士(機械部門) 遠藤 民夫

  トヨタ自動車のリコール問題が大きな騒ぎになった原因の一つに「対応の遅れ」があったと言われて います。これに類するトラブル対応の遅れや対応自体を怠たるなどの事例は、業界を問わず耳にする話 です。事業活動には多様なリスクが包含されています。放置しておくと企業に損失を与える可能性のあ るリスクを管理し、影響を極小化する、いわゆる「リスクマネジメント」が必要とされる所以です。 生産設備トラブルに伴うリスクマネジメントの実施例として、ある中小企業の設備保全管理手法の改善 について説明します。生産した数万個の製品を顧客へ毎日定時に納入している会社です。製品はほぼ全 自動の生産設備で作られますが、不十分な設備保全を長期間継続してきたため、数年前から故障が増加 し、突発的な大故障で大慌てする事例がでてきていました。経営者は社会的使命のひとつである顧客へ の定時納入が出来なくなる事態を心配していました。納期遅延が頻発すれば取引中止となるリスクもあ ります。このため、老朽設備の修理、更新を進めたいのですが、どの設備から対応すべきか設備保全の 優先度を決める必要がありました。それを決定する手段として WHAT IF 分析(「もし・・・がおこったら」 という質問を繰返す手法),FMEA(故障モード影響分析)手法を採用し、リスク評価をすることとしま した。まず、原料投入から製品出荷までの全設備について、 「この設備ではどういう故障が起り得るか、 もし故障したら生産に与える悪影響はどれほどか」などについて現場従業員を含め5名のチームで検 討・評価を開始しました、続いて設備保全の優先度を「1故障発生時の影響の深刻さ、2過去の発生頻 度、3その故障は社内で対応出来るか、4予備品の在庫はあるか、5品質への影響」など、それぞれに 重みをつけ数値化し、事前に決めた計算式で算出しました。基準点数を設けそれ以上の点数となった設 備を早期保全必要設備とし、さらにこの評価結果に経営上の判断を加え、設備保全計画を立てました。
 この手法のメリットは保全優先度が数値で客観的に示される事にあります。この結果を基に関係者で 協議し、自社に適したリスク低減計画を作る事が重要です。その後2年が経過しましたが、計画に従い 設備保全を継続しており順調に稼動しています。近々に本評価結果のレビューも予定しています。また、 この評価作業を通して現場従業員が個々の設備で起こりえる潜在的な故障因子、及び設備保全の重要性 について理解してくれた事も大きな成果だったと思います

省エネルギー 第6回「省エネアプローチの1例」 技術士(電気電子部門) 肥沼 徳寿

 左の表とグラフは昨年A社の年間売上高と電気代の実績値を示したものです。これを基に電気 代省エネ化アプローチの一例を紹介致します(推奨:グラフ化)。
[1] 売上高に占める割合 これを見ると約 2.3%です。この値が妥当かどうかは業種にもよりますが自社過去データやできれば 業界データなども取得し比較して判断材料に致しましょう
[2]グラフは損益分岐点分析を模したものです。これによれば売上高が0であっても電気代をかなりの程 度使用している可能性があります。原因として考えられるのは1機械、設備、パソコン、コピー機などの 待機電力2非常灯、安全灯、防犯灯などの作業・仕事がないのに消費している電力です。省エネ化の第一 歩としてこの固定費に相当する部分について限りなく0を目標として半減、 を狙い取り組みましょう。 先ずは社内で意識改革しお金をかけないでこまめに消灯や電源 OFF に取り組むことからスタートです。
[3]変動費・グラフの傾斜を小さくする取組み グラフの傾きは“省エネ”機器への更新によって改善さ れると考えます。具体的には省エネタイプの蛍光灯、LED、機器、エアコン等への交換です。最近は驚くほ どの省エネ機器が開発されています。ただこれは投資を要しまので事業計画により実施が望まれます。

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2010年02月01日 発行 発行責任者:かわさき技術士クラブ 代表幹事 肥沼徳寿
E-mail: t_koinuma@mtf.biglobe.ne.jp

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