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「かわさき技術士センターの新たな発展について」
かわさき技術士センター会長 磯村 正義
「NPO法人かわさき技術士センター」は2012年6月に発足し、今年で6年になります。
その間「科学技術の振興及び経済活動の活性化に寄与する」ことを目的として、起業支援、中小企業支援等を行ってきました。
一方当センターと緊密な関係にある「特定非営利活動法人エコかわさきフロンティア」は
2009年設立以来、地域の環境保全に寄与する活動を行ってきました。
両法人とも川崎市を中心とした地域の中小企業支援を行っていること、
さらに重複しているメンバーも多いことから、今般、両法人が合併し、より効率的な活動を目指すことになりました。
これまでエコかわさきフロンティアが行っていた環境保全活動を当センターに取り込むことになります。
近年、国連によるSDGs(持続可能な開発目標)が提唱され、科学技術、環境等を総合的にとらえ、
よりよい社会を包括的に追及していこうという動きが加速してきています。
かわさき技術士センターが従来の科学技術に加えて環境保全の活動も行っていくことは、
SDGsの目指すところと合致するものだと思います。
当センターが川崎市をはじめ、その他の地域に対して、科学技術振興、環境保全等、
少しでもお役に立てることができればと願っております。
「補助金の申請と実行に際して上手く技術士を活用して下さい」
技術士(化学部門) 佐々木 久美
我が国の物づくりを支えてきた中小企業は多様な技術開発の担い手であり、
それに対する公的支援の有力策として補助金制度があります。
皆様御承知の「ものづくり・商業・サービス向上革新補助金」(以下、ものづくり補助金)は、
「バラマキ」との批判がありながらも、H24年度補正予算から開始されてから早いもので5年経過しており、
直近ではH29年度補正ものづくり補助金申請書が5月下旬現在審査中です。
そもそも、この補助金制度が誕生した背景として、
従来から「サポイン」(戦略的基盤技術高度化支援事業、研究期間2~3年、初年度補助金額上限4,500万円)がありました。
「サポイン」の補助金額は高額で魅力的ですが、
産学官もしくは産産連携共同体を結成して事業管理者等を分担する点などが少々厄介で、
しかも申請書が質量共膨大なものとなり、一般の中小企業にはとても手出しできるものではありませんでした。
そこで、ユーザーからの批判に応える形で、緩やかな連携でしかも簡略な申請書で申請可能な補助金制度として、
中小企業・小規模企業向けに新設された経緯があります。
この補助金制度は新しい技術開発に基づいて「革新的なものづくり」に挑戦したい中小・小規模企業にとっては
サポインより敷居が低く、単独でも申請可能な使い勝手の良い補助金制度ですので、積極的に挑戦されることをお勧め致します。
しかしながら、日常業務で多忙な中小企業の皆様にとっては申請書の作成は少なからず面倒な作業かと思います。
一方、中小企業庁の方針に従って「ものづくり」技術分野は用途毎に整理されておりますが、
多くの技術士がその現場で活躍した経験があります。
技術士は企業での技術開発計画やそれらを統合した形の中期経営計画の策定立案という実務経験も豊富ですので、
補助金の獲得を切望しておられる中小・小規模企業にとっては、申請書作成のみならず、
それを機会に自社の技術経営戦略を見直して、
中期経営計画に反映するに際しても手助けになろうかと思います。
また、見事採択された暁には、実行段階でのコンサルティングや取り纏めの際にも大いにご協力できるものと思います。
ものづくり系の中小企業は勿論の事、技術をベースとする事業を展開している企業様におかれましては、
技術士と補助金をうまく活用して自社技術の高度化・多様化を実現して戴き、
その結果として技術士が御社の成長をお手伝いできれば幸いです。
「全固体リチウム二次電池と電気自動車」
技術士(化学部門) 渡辺 春夫
リチウムイオン二次電池は、1991年にソニーが世界で初めて実用化しました。
当初は、携帯ビデオカメラを軽量化することを目的としていました。
それから四半世紀以上が経過した現在、状況は一変しました。
情報端末をはじめ、定置型電源、電気自動車の使用規模が拡大しており、
特に、中国の自動車用電池生産が著しく拡大しています。
2020年代に、リチウム、コバルト、資源が不足するのではないかと懸念され始めています。
一方で、上記資源問題とは別に、全固体リチウム二次電池の開発競争が熾烈になっている。
これは、電池の電解質を、従来の液体電解液から、固体電解質に変えるものです。これにより、
エネルギー密度向上ができ、可燃性有機電解液を用いない安全な電池にすることができます。
研究開発の肝は、固体電解質のイオン伝導度を液体電解液並みに向上することでした。
この分野の日本の研究者の活躍は大きく、現在、このレベルに到達することができています。
さらに、充放電中に膨張収縮する正極と負極と固体電解質の接合性の課題も解決することができています。
国内では、昨年の東京モーターショー2017で、トヨタ自動車は、
2020年代前半に電気自動車などの航続距離が大幅に延びる全固体リチウムイオン電池を実用化する方針を明らかにしました。
トヨタが東京工業大学と開発中の全固体電池は、
現行の液体電解液を使うリチウムイオン電池の約1.5倍の容量で3倍以上の出力を得る事が出来、
充電時間もガソリン車の給油時間なみに短縮可能としています。
電解質が固体であることで、環境温度への依存性が少ないのが特徴で、
100度の高温やマイナス30度の低温時でも著しい性能低下が無いとされています。
海外に目を向けると、オバマ大統領に絶賛された全固体リチウム電池の研究開発を進めていた
米国のスタートアップ会社のSakti3を、あの掃除機の英国のダイソンが、買収し子会社化しました。
そして、2020年までに電気自動車製造を開始すると発表しました。
また、米国のローレンス・バークレー国立研究所の固体電池のコア特許の独占的ライセンスを持っている
スタートアップ会社のSEEOを、ドイツのボッシュが買収しました。
その他、全固体リチウム二次電池に関わる起業、買収のニュースがたくさんあります。
このような状況のなか、自動車を作った実績も、電池技術も持たない電気自動車会社の台頭が予測されます。
テスラモーターズが、パナソニックのリチウムイオン二次電池で一大躍進したように、
技術の潮目が変わるときは、ビジネスが変化するときです。
これを是非ともチャンスとして活かしていきたいものです。
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