中小企業技術支援ニュース第103号(2025/11)

目次
・ 省エネと私 〜技術者としての実践とこれからの展望〜
・ お役立ち最新情報



 私は長年、ビル管理システム、国際ネットワーク、電気・空調設備の設計・構築に携わってきました。近年は、CO₂削減(カーボンニュートラル)に向けた中小企業向けの省エネ診断やアドバイスに注力しています。
 直近では、川崎国際環境技術展にて、海外からの講演や企業による出前授業が行われ、高校生を含む若い世代への環境教育の広がりを実感しました。こうした取り組みは、省エネの意識を社会全体に浸透させるうえで非常に重要です。

≪ 省エネ推進に必要な視点 ≫
 省エネ診断の現場で感じるのは、PDCAサイクルを回しながら、組織全体で省エネリテラシー(感度・危機意識)を高めていくことの重要性です。具体的には、以下のようなステップが基本となります:

  • 自社(または社会全体)のエネルギー消費状況を把握する
  • エネルギー管理体制や中長期を見据えた省エネ計画を策定する
  • 実施状況を定期的にレビューし、改善を繰り返す

このような継続的な取り組みが、省エネ文化の定着につながります。

≪ リテラシーをどう育てる ≫
 では、どうすれば省エネに対するリテラシー(=MIND)を高められるのでしょうか。私は、日常的な情報収集や改善の試行錯誤(Try & Error)を通じて、意識を育てていくことが不可欠だと考えています。
 特に、若年層への早期教育が鍵です。環境講座を学校教育に組み込み、体系的なプログラムとして確立することが望まれます。私自身も、技術士会での講演や省エネ診断の実務を通じて、普及活動に取り組んでいます。

≪ 組織内での展開と「わいがや」の力 ≫
 私が社会人になったばかりの頃、小集団によるQC活動が盛んに行われていました。いわゆる「わいがや」の場では、現場の課題が自然と浮き彫りになり、改善の歯止めや方向性が明確になっていきました。
 こうした活動は、環境問題にも応用できると考えています。企業や学校など、あらゆる組織の中で、自発的な改善活動を環境分野にも展開することが、持続可能な社会づくりの第一歩になるのではないでしょうか。そのためには、トップの関与と明確な指針が不可欠です。

≪ 技術革新と未来への期待 ≫
 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、国を挙げた施策が進められています。補助金などの支援策も重要ですが、同時に、快適性と経済性を両立させる技術的工夫(イノベーション)が求められます。
 スマートフォンの普及により生活は便利になりましたが、廃棄物処理や電力消費の増加といった新たな課題も生まれています。原子力発電の再稼働やデータセンターの電力需要が注目される中、量子コンピューターや光電融合技術など、次世代の省エネ技術にも大きな期待が寄せられています。

≪ 結びに ≫
 省エネとは、必要な機能や快適性を損なうことなく、エネルギー消費を抑える取り組みです。これは単なる節約ではなく、未来の社会を支える知恵と工夫の結晶です。
 一人ひとりが環境リテラシーを高め、行動を起こすこと。それが、持続可能な社会への確かな一歩になると信じています。



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