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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.68


2017年12月号


発行責任 NPO法人かわさき技術士センター

「水素エネルギーの利活用の進展」
    技術士(応用理学部門) 西田 啓一

 産業情報かわさき2015年6月号に私の執筆した「水素エネルギー社会の実現に向けて」が掲載されてから2年余りたちます。 その間に水素エネルギーを利活用するための技術的進展がみられました。
 少量の水素製造ではなく大量に水素を製造し、それを有効に使用するプロジェクトが今年度からNEDOプロジェクトとして始動し始めたことです。 1つはオーストラリアの褐炭から水添(すいてん:水素添加反応の略)により水素を製造し、液体水素として神戸港に運搬してくる計画です。 現地での製造設備、運搬船の建造、受け入れ設備の整備、大量の水素利用技術の開発プロジェクトです。 もう1つはブルネイの天然ガスから水添により水素を製造し、有機ハイドライドとして川崎港に運搬してきて水素とし、利用する計画です。 いずれも水素製造過程で二酸化炭素(CO2を発生するため、これを現地で地中に埋め戻す計画も進められています。 また、大量の水素を利用する発電タービンの開発などのプロジェクトも実施され、 二酸化炭素を低級オレフィンに変換する技術開発も行われるなど水素エネルギー活用の展開がみられるようになってきました。
 一方、最近EV(電気自動車)と水素を使用するFCV(燃料電池自動車)との競合が話題となっています。 近い未来に無人運転技術の実用化が期待されていますが、ガソリン車とEVやFCVなどがどのように進化していくのか興味のあるところです。

注:オーストラリアプロジェクトは平成30年2月1日に日本技術士会神奈川県支部主催、川崎市後援で川崎市とどろきアリーナにおいて、 ブルネイプロジェクトは平成29年12月11日に神奈川県主催で神奈川県中小企業センターにおいて紹介される。

「環境取組は『三方良し』の精神で」
  技術士(総合技術監理、環境部門) 田脇 康広

 「三方良し」とは「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」で、誰もが知る近江商人の心得を表すものです。 今風に言うなら、{BtoB(企業間取引)、BtoC(企業対消費者間取引)であっても社会的コストやCSR(企業の社会的責任)も忘れないで!} といったところでしょうか。 この思想が1754年には記録として確認できるというのですから、驚きであり、先達は日本の誇りです。
 温暖化対策や廃棄物削減、環境保全などの環境対策では、この「三方良し」の思想なしでは進められません。 「自分が費用を払うのだから、もしエネルギー使用に無駄があったとしても誰にも迷惑はかけていない」とか 「私が買った食材をどのように使おうが、食べ残そうが問題ない」などという発想には、この「世間良し」がすっぽり抜けています。
 例えば、企業は省エネをするとコスト削減で「買い手良し」となります。電力会社は、販売電気量は減るかもしれませんが、 その分発電用燃料の購入費が下がり、また新しい発電所を建設する必要もなくなり、まずまずの「売り手良し」です。 さらに、日本全体でみれば、原油や天然ガスを購入するため海外に流出していた円が国内循環に回り、国内経済の活性化につながり、 グローバルで見てもCO2排出量が減少し地球温暖化防止に貢献するため「世間良し」です。 そのために国や自治体も多種多様な補助制度、税制優遇制度を準備しています。「三方良し」の達成です。
 もう一例、「我が国の食品ロス・食品廃棄物等の利用状況等(H26年度推計)」(環境省H29/4/11報道発表)によれば、 我が国の食品廃棄物は2,775万㌧、そのうち本来食べられるのに廃棄されている食品、いわゆる食品ロスが621万㌧です。 食糧自給率が40%(カロリーベース)に満たない日本で、まだ食べられる食品を国民一人当たり約50㎏/年も捨てていることになります。 誰から見ても「世間良し」ではありません。
 今年の環境白書は冒頭の30ページ余りに、「地球環境の限界と持続可能な開発目標(SDGs)」と題して、 私たちの生活や経済活動が一定の枠の中でのみ許されるものであることを訴えています。地球の人口は75億人です。 その75億人が地球という釜の中で危うく「ゆでガエル」になるところでした。気づいて良かった! まだ間に合います。 「三方良し」の精神で環境問題に取り組みましょう。

「持続可能な開発目標(SDGs)」
   技術士(電気電子部門) 佐野 芳昭

 最近、新聞などでもSDGs(エスディジーズ)を見ることが多くなりました。
 SDGsは、国連で採択された持続可能な開発目標として、17の分野(右図のアイコン)と 具体的な行動の目安になる169のターゲットが掲げられています。 持続可能な社会は、世界全体で取り組むべき目標であり、2030年までの達成に向けて、 途上国に加えて、先進国も含むすべての国・地域が対象になります。
 前ページの「水素エネルギーの利活用の進展」は、目標7の「すべての人々に手ごろで信頼でき、 持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」や、ターゲット9.4の 「2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術および環境に配慮した 技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、 持続可能性を向上させる」に該当します。また、17の分野目標のうち、 すくなくとも12の目標が環境関係であるとされています。
 日本は、上記の17の目標のうち、すでに達成しているものや達成しつつあるものも多くありますが、 未達の目標も少なからずあります。現在の日本の達成状況は、157か国中の11位とのことで、 G7のなかではドイツ、フランスに次ぐ3番目となっています。
 2017年1月の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)では、 「SDGsが達成されることで、食料と農業、都市、エネルギーと資材、健康と福祉の4分野において、 2030年までに少なくとも12兆ドル(約1,400兆円)の経済価値がもたらされ、 最大3億8000万人の雇用が創出される可能性がある」との発表が調査チームからありました。 SDGsは大きなビジネスチャンスでもあります。
 SDGsを理解して、SDGs推進者の一員になりましょう。

お役立ち最新情報

[技術士によるセミナー] (現場経験に基づくホットな内容)

今年度の川崎市産業振興財団との共催のセミナー(かわさき新産業創造センターで開催)は終了しました。 (参照:http://n-kgc.or.jp/information/k20170728/

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2017年12月 1日発行  発行責任者:NPO法人 かわさき技術士センター 会長 磯村 正義
NPO法人 かわさき技術士センター URL:http://www.n-kgc.or.jp/ E-mail: info@n-kgc.or.jp

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